人は愛するに足り,真心は信ずるに足る 感想

目次

中村哲という医者が人を救うという本質を突き詰めた先とは

  • 中村哲という医師がアフガニスタンへと派遣された
  • 金銭的に見返りが見込めないハンセン病1の治療に取り組む
  • 治療に取り組むうちに生活環境の改善が根本的な解決になると判断する
  • 食環境を改善するために砂漠化が進む現地で水路の開拓、灌漑事業を実行する
  • この活動を通して数万人規模の現地民の生活環境の改善という結果に現れた
  • 彼を偉人と称えることは簡単だが、それは再現性をなくす行為ではないだろうか?
  • 彼の思考、行動、家族との関係など紆余曲折を知ることで人民救済のために何をすべきかが見えてくるのではないだろうか?

水路を拓くことによって灌漑が可能となり、万単位の生活環境が改善

  • 現地では農民が多い
  • 対露戦争や内戦により、耕作地帯が減少した?
  • 農民の生業である畑作を取り戻すために水源が必要になる
  • 中村医師は水路を開拓する事業を始める
  • 重機の運転、土木施工の知識などを勉強する
  • 水路は生活に密接に関わるために、わざと水路の途中に家を立てて利権を得ようとするなどの利害対立も生じた
  • また医療品を求めて武力をもって現地民に襲撃を受けることもあった
  • これらに対して中村医師は無抵抗主義を貫き、辛抱強く交渉にあたった
  • このような草の根を分けるような地道な活動を継続し、また資金源獲得のために日本で講演活動も行った
  • 中村医師の思想のもとには論語とキリスト教の教えとがあった
  • また死生観においては仏教的な死を歓迎する姿勢があるように見られた
  • 幼い息子の死、また現地での活動からくる負担感は彼の人生に重責を負わせた
  • その重荷から逃げるでもなく、受容した。これは同時に諦めに似た境地だ。
  • 生は苦しみである。ゆえに死は救済である。しかし積極的な逃避も行わない。諦めとある種の楽観性が彼が歩みを続ける一因ではないだろうか

国連やアメリカの活動と異なるのはなぜか

  • 国連は各種の援助を行った
  • この活動は現地の実情をうまく汲み取れていないと批判する
  • なぜ国連は実情を汲み取れないのか?それは国連が持つ貧困地帯を救済するためのシナリオに誤りがあると指摘する。
  • 不足しているものを与えればよいというのではない。毎日繰り返す生活を取り戻すために何を行うべきか?という視点が必要だ
  • 飢えたものに与えるべきは魚ではなく、魚の釣り方だ、という寓話に近い
  • アメリカに対する批判として、タリバン2に対する無理解を主張している
  • いわゆるテロリストは欧米で高等教育を受けたものが多い
  • ハイテクな機器の操作などは教育を前提とするから、それはもっともだ
  • 中村医師の推測では欧米に対するテロリズムは欧米の生み出した歪によるものであり、一概に他国に責任を見いだせるものではないとしている
  • アフガニスタンに派兵したところで根本的な解決にはならない、むしろ現地民の反発を招くばかりだ
  • これに関しては視点の抽象度が違うなぁ、という感想を抱いた
  • テロが起きたから自国の制度を見直そうという発想になる国民がどれだけいるだろうか?
  • それが他国の人間によって引き起こされたものであればその他国に責任があると考えるのが短絡的だが妥当な思考ではないだろうか
  • そこをぐっとこらえて内省する、根本的な解決に目を向ける、というのは文化的、思想的な背景が必要だと思う
  • そもそも中村医師の意見がどれほど正しいかもよくわからんしな

衣食足りて礼節を知る

  • 水源の確保によって水浴びを頻繁に行えるようになり、皮膚病が減る
  • 水源の確保によって畑作が可能になり、農耕が可能になる
  • 寺院の再建によって心理的な結束が生まれる
  • 結果として生活環境が整い、病気が減る
  • ではアフガニスタンの人が救われることにどのような意味があるのか?

  1. ハンセン病。らい菌が皮膚と神経を侵す病気。外見に大きな変化が現れるため、忌避された経緯がある。現在では治療法が確立されており完治する。 ↩︎

  2. タリバン。ここでは現地宗教を信仰している人、程度の意味合いである。そのため宗教施設といっても寺子屋や結婚式場も含まれるため、これらの施設に対する空爆は現地民から大いに反感を買っている。 ↩︎

感想 

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