りぶ氏の歌うドラマツルギーについて語りたい。
この歌に関しては、見せ場はサビではない。
サビは声の張り方からやや少年的な響きに聴こえる。
サビで声を張ること自体は表現としてセオリーであり、 実際テンションの上昇を感じさせる。
音程が上がることも同様に盛り上がりを演出する。
メロディアスなAメロから緊張を伴うBメロを通じてサビで昇華するという鉄板とも言える展開と演出だ。
ここで一つ提案がある。
曲はサビで盛り上がるように作られるし、 表現もそれに応じてサビを輝かせるようになる。
だがサビが1番美味しい部分であることは絶対の条件だろうか?
聴く側はサビを1番の楽しみにしなければならないだろうか?
この歌ってみたに関してはそうではない。
りぶ氏の甘い落ち着いた男性的な色気が漂う歌声を最大に堪能できるのはAメロだ。
優しく語りかけるような響きが踊るようなメロディをしっとりと仕上げている。
声質に関しては持って生まれた身体性によるところも大きい。
りぶ氏の歌声が官能的ともいえる歌の表現として使われている。
それは余人が真似して容易く再現できるものではない。
りぶ氏の持つ歌声と表現の幅、そしてそれらが表出するポテンシャルを持った原曲が噛み合ってこそ、この柔らかな感動を味わえるのだ。